2008/01/26（土）

ドラゴン パンター G型 スチールホイール

前回はタミヤ製だったが今回はドラゴン製。厚木のホビーショップでは既に売切れだったのでYahooオークションで入手。

今回は3色迷彩上に冬季塗装を施した車輌とする。また，3色塗装はガイアカラーのオキサイドレッドをベースに『ドイツ戦車3色迷彩セット』のダークイエロー(1)とオリーブグリーンを使った。サビ止め塗装の上に直に塗装したとの想定。

このキットはG型前期（1944年3月〜1944年9月生産）と後期（1944年9月〜1945年4月生産）がセレクトできる。学研の『パンター中戦車　パーフェクトバイブル』を参考にすると，キットの排気マフラーが後期型にみられる消炎型ではないことから（マニュアルには不要部品として載っているが，後期型のアゴ付き防盾のパーツ F3 は用意されている）前期型を選ぶ。ただし，後期型で装着された砲塔の毒ガス検知板用ブラケット（パーツ B18x2, B19）やコンパス取付け用ベース版（B24）はミスマッチではあるがそのまま使った。

製作プロセスには流派があって，覆帯（いわゆるキャタピラ）や装備品全てを組立てた後に塗装するタイプと，覆帯や装備品を塗装後に組立てるタイプがあるが，私は後者。ホイール周りなど，入り組んだ所の塗装が面倒くさいのがその理由。

キットにはエッチングパーツやメタルパーツがふんだんに含まれているので全て使う。
改造はいつもの圧延加工，鋳造加工，溶接加工（これはかなりの部分で再現されているので少しだけ），切削加工。それと，今回初めて行った予備覆帯の連結棒追加。また，後部側面のラック（C39）に装着する覆帯はキットのままだと穴が小さくてはめ込めないため，ヤスリで削って広げた。

今回は製作プロセスの詳細を追ってみる。

パッケージ
作りごたえの豊富なパーツ。 エッチングパーツや透明パーツも付属。マジックトラックの覆帯は初めて。

完成品

組立

組立は上部と下部に分けて行う。また，ホイールやスコップ等の装備品はランナーにつけたまま塗装まで行う。
大まかな順序は，

1. 砲塔や装甲版の圧延，鋳造，溶接痕，切削痕加工（いずれも雑誌のアーマーモデリングに載っていた技法）
2. パーツ（ホイール，スコップ等の装備品以外）切り離し，パーティングライン削り
3. 接着

圧延，鋳造，溶接痕加工の道具
	加工に不要なものもあるが（使うものは黄色で示す），とりあえず 左上から右に， 通常の接着剤 流し込み接着剤 メタルプライマリー（金属部の塗料剥がれ防止用下塗り剤） マークソフター（デカールの軟化剤。表面の凹凸に密着させる） 左下から右に， 液状瞬間接着剤 ゼリー状瞬間接着剤（小部品の接着に良い） タミヤパテ（ベーシックタイプ） タミヤエポキシパテ（速硬化タイプ）
	圧延加工に使用する。下から， ブタ毛の筆 ブラシ（真鍮） ブラシ（スチール） ブラシ（ナイロン） これらは全て１００均で入手。ブラシは3本セット。
圧延，切削	鋳造	溶接
上の写真： 圧延板加工は，装甲板に流込み接着剤を多めに平筆で塗り，表面が溶けてきたらブタ毛の筆や金属製ブラシで表面を叩き凹部を作る。 表面が毛羽立つので，乾いたら600番程度の紙やすりでならす。 下の写真： 切削痕は，デザインナイフの先を垂直にあてて水平に引っ掻くようにズラして傷をつける。 下が加工前，上が加工後。	表面にタミヤパテを塗って，多少乾いてきたらブタ毛の筆で軽く叩いて凹凸をつける。凹凸が目立つところは指で軽く抑え込む。 乾燥後に600番程度の紙やすりで軽くならす。 前装甲板の機銃用ボールマウントも同様に加工。	ドラゴンのこのキットは溶接痕が丁寧に再現されているが，再現されていない後付パーツに追加で加工する。 タミヤエポキシパテを爪楊枝の先にちょっと乗せ，これを接着面に沿ってこすりつけるように置く。 その後，先をマイナスドライバ型に削った爪楊枝でランダムに押さえ込んで段をつける。 多少オーバーな痕になるが，スケールモデルとしては分りやすいので気にしない。
各種のヤスリ
	パーティングラインの除去や整形，穴の拡大に使用するヤスリ。 左から 自作の紙やすりホルダー 丸型 角型 平形 平形（ダイヤモンド粒子塗布，１００均で入手） 自作の紙やすりホルダーは，1mmプラ板を2枚重ねて接着し （サイズは10mm x 50mm），紙やすりを両面テープで接着する。 張替えは両面テープごと。 荒削りには400か600番，仕上げには1000か1200番を使用。 ダイヤモンド粒子が塗布された平型ヤスリは主にエッチングパーツのバリ削り用。
組立て
	直射日光の下で撮ったので，妙にコントラストの強いCGのような写真になってしまった。 迷彩塗装で邪魔になる装備品以外を組立てる。 ベリスコープも後付け。エッチングパーツは瞬間接着剤を使う。 砲身は塗装し易いように未接着。 前方左側の操縦手用ハッチはオープン状態とした。 下部はホイールを除いて組立て。キットではG型前/後期が選べるが，排気マフラーや防盾との整合を考慮して前期型を選択。
予備覆帯の加工
0.5mmのピンバイスで連結棒用の穴を開ける。 覆帯を親指と人差し指ではさみ，人差し指の腹で刃をガイドしながら右手でピンバイスを回す。 全てを貫通することはできないので左右両方向から開ける。 結果的に一直線にならなくても気にしない。	穴付近ににゼリー状の瞬間接着剤をつけ，0.5mmの真鍮線を左右から挿し込む。 左右の真鍮線の角度が違ってもこのスケールなら目立たない。 後部ラックにはめ込む穴が小さいので角型ヤスリで削る。 また，円形の打出しマークやパーティングラインもヤスリがけする。 接写してみると，左下の打ち出しマークの削り残しがあったり，広げた穴がいびつだったりする。。。

塗装

今回は，3色迷彩の上に冬季塗装。サビ汚れを強めに，埃や泥汚れは無しとした。
塗装は (1) 組立てた上部，下部，砲塔，砲身，(2) ランナー付きのホイール，(3) ランナー付きの装備品　に分けて行い，下の塗料を侵さないように，(1) ラッカー系，(2) エナメル系，(3) アクリル系 の順に塗り重ねる。

1. 下塗り
   • 全てをスプレー缶のサーフェイサー（グレー）で下塗り。タミヤでもグンゼでも良い。
2. 基本塗装
   1. 砲塔内部
      • ラッカー系（グンゼ）：フラットブラックをエアブラシ。
      • エナメル系（タミヤ）：フラットホワイトを下地が分る程度に薄くエアブラシ。
   2. 全体（上部，下部，砲塔外部，砲身）の3色迷彩
      • ラッカー系（ガイアノート）：オキサイドレッドをエアブラシ。
      • ラッカー系（ガイアノート）：ダークイエロー (1)とオリーブグリーンをエアブラシで迷彩塗装。
   3. 全体の冬季塗装
      • エナメル系（タミヤ）：フラットホワイトを薄めにエアブラシ。
      • エナメル系（タミヤ）：フラットホワイトに，ナイフで削ったパステルのホワイトとグレー粉を混ぜて，幅広の平筆で縦方向に手塗り。
   4. 排気マフラー
      • エナメル系（タミヤ）：フラットブラウンとレッドブラウンを半分づつ混ぜてベース色にする。後の工程でサビ表現を追加。
   5. 覆帯
      • ラッカー系（グンゼ）：黒鉄色をエアブラシ。
   6. スチール製ホイール
      • エナメル系（タミヤ）：クロームシルバーを少し薄め，綿棒に含ませて覆帯との接触面をなぞるようにして塗装する。
   7. 装備品
      • ラッカー系（グンゼ）：木部はウッドブラウン，金属部は黒鉄色で筆塗り。金属部の縁や角はシルバーでドライブラシ。
      • ラッカー系（ガイアノート）：その他はダークイエロー (1)で筆塗り。
   8. テールライト
      • エナメル系（タミヤ）：クリアブルーにクリアイエローを少し混ぜてクリア部品に筆塗りし，後付けする。
3. フィルタリング（退色処理）と墨入れ
   1. 冬季塗装の剥がれと墨入れ
      • エナメル系（タミヤ）：エナメル系溶剤を含ませた綿棒で縦にこすりながらフラットホワイトを拭き取る。
      • アクリル系（タミヤ）：フラットブラックとフラットブラウンを混ぜて黒に近いこげ茶色を作り，アクリル溶剤でかなり薄める。これをボルトの付け根や溶接痕, ハッチの隙間に流し込む。
        また，冬季塗装の上にも部分的に塗って落ち着いた色にする。
   2. 装備品
      • エナメル系（タミヤ）：木部はクリアオレンジとフラットブラック，それにツヤ消し用のフラットベース少しをエナメル溶剤で薄く溶き，全体に塗る。
        さらに，ブラックを少し濃くしたもので握り部や金属部との境目に塗り重ね，深みを出す。
      • エナメル系（タミヤ）：エナメル系で作った墨入れ用塗料を固定具との境目に沿わせて流し込む。
4. ドライブラシ
   1. 覆帯と駆動輪の突起部
      • エナメル系（タミヤ）：ホイールと覆帯の接触面は磨かれて銀色になる（はず）。その部分をクロームシルバーで使い古したナイロン筆の先端をカットした筆を使ってドライブラシ。
   2. 突起部の角や屈曲部
      • エナメル系（タミヤ）：ジャーマングレーで塗料の直線状の塗装剥がれを表現する。部分的な剥がれは次のチッピングで。
5. ウェザリング-1 （サビとチッピング，砲身）
   1. サビ
      • アクリル系（タミヤ）：タミヤのウェザリングマスターBのサビとCのアカサビをアクリル系溶剤で溶かし，筆で流し込んだり，雨だれのように流れた感じを筆塗り。
      • 排気マフラーとそのカバー，覆帯の溝，溶接痕，切削痕，角張った部分，砲塔下部，装備品のジャッキや牽引ワイヤ。装甲版の所々（特に予備覆帯フック等の突起部の付根） には雨だれのようなサビの流れを表現。
   2. チッピング
      • エナメル系（タミヤ）：少し薄めたジャーマングレーをスポンジにつけてハッチの周辺部や内面，装甲版の所々に叩くように塗る。強調したいところは000番の極細筆で手描き。今回は軽め。
   3. 砲身
      • タミヤ　ウェザリングマスターBの"スス"を100均で購入した化粧用のスポンジチップ（これ）で砲身先端にこすりつける。内部も。
6. デカール
   • 上からマークソフターを塗って柔らかくした後に，水で塗らしたティッシュの先で塗装面にチョンチョンと押さえ込んで凹凸に密着させる。
7. ウェザリング-2（全体的な汚し）
   • パステル：ナイフで削って粉にしたブラックとダークイエローをステンシル用の筆につけて塗装面をこする。
   • デカールの原色を抑え，汚れを表現するのにもこの手法を使う。
8. 仕上げ
   • 缶入りつや消しクリアを全体に軽く吹いてツヤを統一する。デカール周辺透明部のテカリを抑える効果もあり。

基本塗装（砲塔内部と3色迷彩）
	後はタミヤの缶入りサーフェイサー。まずはこれをスプレーする。 前面左から，ガイアカラーのドイツ3色迷彩セットとオキサイドレッド。 隣が，グンゼの Mr カラー。
	左がタミヤのエナメル系，右がアクリル系塗料。 筆塗りで一番良いのはエナメル系。延びが良く乾燥も速い。 アクリル系は延びが悪くムラになり易い。 ラッカー系も延びが悪いのでいつも少し薄めて使う。
砲塔内部，オキサイドレッド	3色迷彩
上の写真： サーフェイサー塗布後にラッカー系ガイアカラーのオキサイドレッドを全面に塗る。これが3色迷彩のレッドブラウンの替わり。戦局が悪化して塗料をケチり，サビ止め剤をベースにした車輌を再現。 下の写真： 砲塔内部はMr カラーのフラットブラックをエアブラシ後に，タミヤエナメルのフラットホワイトを下地が見える程度にエアブラシ。この際，角の隅を薄めにしてグラデーションをつけると奥行き間が出てリアルになる。	ラッカー系ガイアカラーのダークイエロー(1)とオリーブグリーンをエアブラシ。 手グセが出ないように気をつけながら，縦方向に流れる形で塗る。
冬季塗装
タミヤ　エナメル系フラットホワイトを溶剤で薄めて全体にエアブラシ。 ちょっと薄すぎたため，砲塔下部など塗り溜ができてしまった。	パステルのホワイトとグレーの粉にエナメル系フラットホワイトを溶剤で薄めて混ぜ，幅広の平筆で全体に塗る。 冬季塗装は石灰を顔料にしたとのことなので，パステルで粒状感を出す。
冬季塗装のはがし
左が爪楊枝程度の極細綿棒。 右が１００均で買った普通の綿棒。	綿棒にパステル系溶剤を含ませて表面をこすってホワイトを落し，剥がれを再現。 チッピング同様に，乗員が歩くところや手をかけるところ，角や屈折面，砲塔下部は剥がれやすいと見て強調して剥がす。
ホイール，ベリスコープ
ホイールや装備品はランナーに付けたまま塗装する。 装備品は切り離し後にレタッチする。	ランナーから切り離した後に，ホイール外側中心線にあるパーティングラインを紙ヤスリで削る。 その後，エナメル系クロームシルバを綿棒に含ませてホイール外面を撫でるように塗る。	マスキング液を水で薄めてレンズ部に流し乾燥後，ラッカー系（エナメル系でも可）フラットブラックをエアブラシ。 乾燥後にマスキングを除去したのがこの写真。
サビ
タミヤ　ウェザリングマスターのサビとアカサビをナイフで削ってアクリル溶剤で薄める。 サビとアカサビは完全に混ぜないで適度にムラがあるように。	予備覆帯はエアブラシで吹き飛ばないように割り箸に両面テープで固定。 車体の覆帯はある程度の長さまではめ込んでおく。 ラッカー系Mr カラーの黒鉄色はタミヤ　エナメルと比べて黒っぽいので，シルバーを10:1程度で混ぜエアブラシする。	サビを筆に充分に含ませ，写真だと縦方向に筆を撫でて溝に流し込む。 乾燥後，サビがきついようならナイロンブラシかステンシル用のブタ毛ブラシでこすってこそげ落す。
タミヤ　エナメル系フラットブラウンとレッドブラウン混色で下塗り。 排気マフラーカバーも同様。	アクリル系溶剤で溶かしたサビを塗る。 サビとアカサビをまだらに塗り，リアリティを出す。